イヌオ~ヒトニヤサシク~

映画、音楽、酒、そしてヒトを愛する駆け出しバーテンダーが徒然なるままに趣味と幸せを考察する。

好きな人との5年間~心の病をもつ風俗嬢~(14)

板の間で寝たけど落ち着かなかった
そりゃそうだろう。こんな事があったら頭が混乱するのが当たり前だ。寝付けるはずが無い
眠ることが出来なくなった俺はタクシーで家に帰った


皆今頃どう思ってんだろう。えりかのことを心配してるだろうか。それとも酒癖が悪いぐらいに思っているんだろうか (実際絶望的に悪かったし)

皆知らないんだ。えりかの障害や鬱病の事なんか。気にかける人間の方が少ないだろう。人間なんてそんなもんだ。他人にはそんなに興味を持っちゃいない。自分の評判やらなんやらを気にした所で意外なほど何とも思っちゃいない。


でも俺は、こんな事が起きてもえりかに対する想いは消えなかった、、、。


三月も終わりが近づいてきた。夜はまだ冷える。俺はある日深夜のコンビニでバイト中だった。
言っちゃ悪いがスタッフも威張るだけで仕事しないオッサンばっかりだったし、繁華街という事もあってお客さんも層が良くなかったし、さっさとおさらばしたかった。愛着なんか一切なかった。

俺は威張り散らすおっさんの代わりに事務所で仕事をしていた。オッサン2人はレジで談笑中だった。

ブーッブーッ

ん?こんな時間にメール?誰だ?
えりかからだった

ー 風邪ひいた ー

驚いた。えりかが風邪をひいた事にじゃない。メールが来たこともそうだし俺にヘルプを求めている事にだ。
大丈夫かと聞いた。

ー 平気。さっきまで友達と鍋食べてたんだけど急に苦しくなって寝込んだの。今皆鍋食べ終わって帰ったところ ー

平気じゃ無いだろとか、誰も助けてくれなかったのかよとかどっからツッコミ入れりゃ良いんだよと思ったけど、俺の返事は決まってた


ー 今からそっち行くよ ー


オッサンにもムカついてたし嫌いな職場だったしで嘘ついて早退するなんて何とも思わなかった。
えりかは遠慮がちだったけど最終的に来て欲しいと言ってきた。
と言うよりも来てほしいに決まってる。

俺はオッサンに嘘をつき、廃棄を持って店を出た。深夜の1:00だったと思う


夜の国道を自転車で走った。寒いはずなのに寒くなかった。胸がすごく、暖かかった。


ガチャン
アパートの鍵は開けてあった
「えりか。起きてるか?」

部屋は馬鹿みたいに散らかっていた。鍋も酒も片付けられてなかった。本当にたった今までここで飲み会があったのだ。まるで躾の出来てない大型犬でも放し飼いにしている様にグシャグシャに散らかってた

そしてそのゴミの山の中のベッドの中で、えりかが寝ていた。