イヌオ~ヒトニヤサシク~

映画、音楽、酒、そしてヒトを愛する駆け出しバーテンダーが徒然なるままに趣味と幸せを考察する。

好きな人との5年間~心の病をもつ風俗嬢~(2)

大学でのえりかは人気者だった。
そのルックスと明るい性格も相まって女子からももちろん男子からもモテモテだった。

ある日の昼飯時、俺は友達数人と弁当を食べにいつも通り食堂に来ていた。
そして同じクラスの女の子がグループで同じ場にいた。皆食べる席を探しているところだった。そして1人の女の子が俺に話しかけてきた。

「あ、イヌオ君も来てたんだ。この娘えりかちゃんって言うの。まだからんでないよね?」

ドキッ!

本当にドキッとした、と言うよりもビビった。その女の子の隣にはあのえりかがいたのだ。いきなり紹介されたのだ。俺の心は完全に丸腰であった。

「えりかです。よろしくね!」
丸腰の俺はしどろもどろな上に変にカッコつけちゃって
「あぁ、うん」

会話終了。言葉のキャッチボールにもならなかった。と言うか俺の大暴投。完全に自爆だった。

それが俺とえりかの初めて交わした言葉だった。
こんな酷いもんだったけど、今でもはっきり覚えてる。

そして大学に入って俺の一番の楽しみにしていたサークルの入部の時期が来た。サークル紹介を経てのサークル勧誘。でも俺には1個しか選択肢が無かった。軽音サークルだ。
高校でもろくに人と遊ばずギターばっかりいじってた俺。ろくに友達を作らなかった俺が特技で居場所を探すには、そのサークルでしか有り得なかった。

サークルに入るとすぐに先輩から可愛がってもらった。高校でずっとギターを弾いてた俺は、自慢じゃないけど周りの1年生よりずっと上手かったし音楽の趣味もサークルの空気に合ってた。
あぁ、やっと自分を出せる。それが嬉しかった。

そしてなんとなんと。なんとえりかも同じ軽音サークルに入部していた。でも相変わらず俺はかっこつけ気味&緊張でろくに喋れなかったけど、一緒のサークルだということだけで距離は不思議と縮まるもんだった。

隣県から来て一人暮らしをしていた事もあってえりかはサークルや学部の飲み会にガンガン誘われていた。(もちろん可愛いというのが重要なのだけど)
意外なことにえりかは見た目に反して飲むとハジけるタイプであり、潰れるまで飲む。吐くまで飲む。そんなの当たり前でございって感じだった。

だんだんそれがネタになっていき、皆面白がり、泊まる家々で数々の伝説を遺していった。

そして皆もだんだん気付いていく。「あ、この娘変わっってる。」って。しかもかなりの変人だと。

そしてえりかは欠席が多かった。五月になる頃には講義のほとんどを休んでいた。1度俺を含めた数人でサークルの連絡事項を伝えるのと心配でアパートに行ったのだけど、きわどいパジャマ着たえりかが眠そうに「ごめん寝てた、、、」。もう1時なのに講義の準備もしていなかった。

えりかは何か他の人と決定的にズレていた。
でもその時の俺はただの寝ぼすけさんで納得していた。